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T's Bar見習いバーテンの通称ジャックだ。元々、音楽は好きなのだがメカには滅法弱い。
ただシェイカーを振っていればいいと考え入店したのだが、ここで世話になる限り、オーディオ全般についての知識が無いと話にならないらしい。現にお客さんはそれを楽しみに来ているようだ。先輩バーテンである管 球蔵のアニキは、一見くたびれた感じだが、オーディオの話になると尤もらしいことを言う。お客さんとの会話も慣れたもんだ。
そんな俺が、ある日嵐山支配人から指令を受けた。「オーディオトランス老舗メーカーのタムラ製作所が二十数年ぶりに新製品を出すらしい。勉強だ、調べてこい。タムラにはちゃんと話通してあるから、心配するな。」とは言われたものの、何を聞いてくればいいのか、ちっともわからない・・・。

某日、俺は言われるがままにタムラ製作所に出向いた。見たところ普通の工場だ。
ここで開発が行われているのか?「T’s Barの者です。新製品について話聞きに来ました。」
不審そうな眼で人の顔を覗き込む守衛。立て続けに「何も聞いていませんか?」と俺。
「はい」と頷く守衛。“???、話伝わってないじゃないか・・・!”とは言え、このままでは引っ込みつかず、粘る俺に折れてくれたのか取り次いでもらい、何やら人の良さそうなお兄さんが出てきて、待合室に案内された。(待合室写真)“何だこれは!?”店にあるAltec A7よりさらにデカいスピーカーが眼に飛び込んできた。


その脇には、複数の真空管AMPのシステムが鎮座していた。もはや待合室に非ず、立派な試聴室じゃないか。タムラのお兄さん曰く、「これらはタムラOBの自作品です。AMPはタムラのカタログシャーシキットを使っており、歴史的に価値あるものとして、展示しております。鳴らすことは出来ますが、周囲に影響与えるほどのハイパワーで、滅多にやりません。」なるほど・・・、さすがオーディオパーツメーカー、待合室からこだわっている!お兄さんから
「いかがでしょうか?TAMURA Sound Life Studioという試聴室があるのですが、お聴きになられますか?」
「も、も、もちろんお願いします!」
分厚い鉄の二重扉を開け、すかさず入室。“すげー!これが噂の・・・。”(スタジオ写真)部屋の構造は、全て音響に配慮した造りになっているようだ。


B&WとJBL4345を前面に、右の脇にシステムラックがある。AMPは、タムラ75th アニバーサリーモデル パラレルシングル方式の“T75-M1”と木製パネルが美しいプッシュプル方式の“Bourbon”が並んでいる。早速John ColtraneのBlue Trainをかけてもらった。“聞いたことも無い何とも艶めかしい音だ。”その日は、満足して帰り、嵐山支配人から目的を達成していないことを咎められ、再度の指令がでたことは言うまでも無い。

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